知る人ぞ知るクイズ大国である日本。週末になると、全国各地で「草クイズ大会」なるものが行われ、ツワモノたちが腕を競う。記者も参加してみた。

 液晶モニターが「スタート」を告げると、150人近い出場者たちが一斉にクイズの答案用紙に向かった。ミョーな静寂。クイズ番組の収録ではない。企業のクイズイベントでもない。クイズ研究会の大学生たちが企画した「ABC」という社会人のためのクイズ大会。「オープンクイズ大会」「草クイズ大会」と呼ばれる、愛好家たちが自主的に開く大会のひとつだ。

 道場破りの意気込みで、私も参加した。そうして150人の一人として、自信満々で問題用紙をめくった…はずが、なんだ?これ。たとえば、こんな問題。

「発明者の名前からゴルトシュミット法とも呼ばれる、アルミニウムの燃焼熱を利用し金属酸化物から金属を還元する方法を何というでしょう?」

 難しいというより、まず問題の日本語すら理解できないレベル。そんな、ウルトラ難しいクイズ問題を20分間で100問。1問当たり約12秒で解かなくてはいけない。

 すぐに発表された結果では、トップは92点。一方、知識の泉だったはずの自分は、大目に見積もった自己採点で20~30点くらい。今回73点あたりがボーダーラインだった予選突破にも、はるかに及ばなかった。最初の筆記問題で、この難しさだもの。その後ステージで行われた「早押し」系ラウンドも、推して知るべし。

「では問題です。市場経済において…」
(ピンポーン)
「神の見えざる手!」
(ブー)
「正解は、ウィンブルドン現象でした」
(「あー」と会場がどよめく)

 何が「あー」なのか、私にはさっぱりだが、そうして集合時間から、休憩をはさんで約8時間、クイズの強者たちの熱い戦いが繰り広げられた。

「テレビのクイズ番組は、問題が簡単すぎますよね。やっぱり難易度が高くないと、おもしろくない。予選に落ちても、ハイレベルなクイズをたっぷり見て楽しめるので、あちこちのオープン大会にけっこう参加してますよ」

 最後まで、かぶりつきで観戦していた参加者の男性はそう話す。

AERA 2013年5月20日号