もう一つ、“第6の味覚”とも言われるのが脂肪味。うま味と塩気、そこに脂質が加わると病みつきになりやすいという。

「かっぱえびせんですよ。『やめられない止まらない』って言ってたでしょ。塩気とうま味、そこに脂が加わったら癖になってしまうんです」(同)

 その指摘どおり、街の“濃厚メニュー”は、ラーメンなら背脂などの脂分がたっぷり、ピザが人気のイタリア料理店ならオリーブオイルやバター、チーズがたっぷり。そうして増し増しにされている脂分こそ、高齢者たちが濃い味を避けたがる原因かもしれない。

 別の見方もある。食品産業界の専門紙「日本食糧新聞」では、大手メーカーの市販品情報を分析し、トレンドを予測しているが、2023年の味のトレンドとして「濃い味」を挙げていた。

「“濃い味”というとしょっぱいイメージがありますが、最近のトレンドではさらに、とっても甘いものや、激辛に代表される辛味、ニンニク増し増し、去年の秋からはバター増量の商品が出てきています。これはコロナ禍の3年間、免疫力や健康・体力増進などの健康志向がクローズアップされてきましたが、消費者側がこれに疲れ始めているのではないかと考えています。ダイエットを頑張っている人が、1日だけ好きなものをたらふく食べる“チートデー”が流行しているのと同じで、背後にあるのは背徳感。そんな禁断の味に目が向いているのが“濃厚メニュー”が増えている理由だろうと分析しています」(新製品事業部)

 濃い味メニューが増えている理由はわかった。でも、食品業界の皆様、濃い味が苦手な人たちもたくさんいることを、どうかお忘れなく。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2023年4月7日号