そのとおり、株式だから暴落することはあり得る。でも、これまでの「歴史」が示すのは、一時は落ち込んでも力強く回復してくる株式市場の力だ。過去の実績は将来を約束するものではないが、暴落時には逆に買い増しする長期投資家は多い。大切なのは、現在の株価ではなく、20年後、30年後の株価であることを肝に銘じておきたい。

 先の尾藤さんによると、株式投資に慣れてくれば、一定企業の個別株を保有するのも「あり」だという。

「市場全体に投資するインデックスファンドを中心にしつつも、それにグローバル優良株を加えていくのです。例えば米国企業で言えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンやP&G、マクドナルドなどです。これらの中には毎年増配し、それが何十年も続いている企業があります。そんな優良株を業種を分散させていくつか買っておけば、配当金が有力な年金補完収入になりえます」

 海外株式への投資ならお金を動かす幅が広がりそうだが、もっとも最近の若い世代はすでに「体験ズミ」の人が増えているようだ。2019年の「老後資金2千万円問題」で将来不安に火が付き、投資熱が広がっているからだ。

 殺到しているのは、まさに「長期・分散・積み立て」投資が実践できる「つみたてNISA」。昨年は一昨年の倍、約210万口座が増えた。うち6~7割は20代、30代で、投資対象は米株や世界株式に投資するインデックス型の投資信託を選ぶ人が多い。

 国内・海外株式を投資対象とする投資信託への資金の純流出入額を日興リサーチセンターがまとめた。世界的に株式相場が好調だったからだろう、昨年は8兆3千億円ものお金が海外株式に流入した。

「成長株式、とりわけ米国のそれに投資するファンドへの流入が堅調でした」(日興リサーチセンター)

 すでに、海外株式にお金を移すことに一定の日本人は抵抗がなくなっているようだ。こうした現象をとらえて、JPモルガンの佐々木融・市場調査本部長は、

「いよいよ、これから家計のお金のキャピタル・フライト(資本逃避)が始まるのかもしれません。行き過ぎた円安で円の購買力がどんどん減っていくのに耐えきれなくなり、次々に外貨や外国株へシフトしていく恐れがあります」

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