原因こそ円安そのものではないものの、今回取り上げたことも起きることは同じである。円を売って外貨に替え、それで株式ファンドに投資するからだ。

「1千兆円ある現・預金の1%、10兆円が動くだけで為替マーケットは相当な影響を受けるでしょう。10兆円は日本の輸出が好調だったころの年間貿易黒字額に匹敵する金額です」(佐々木さん)

 高齢者のお金が目減り阻止で海外に動けば、あっという間に10兆円になりそうだが、保守的な人が多いとされる高齢者は本当に動くのか。

「今や外貨はスマホで買えてしまいます。元気な高齢者はスマホを使いこなしているから、手続きが面倒というハードルはなさそうですよ」(同)

 仮に家計のキャピタル・フライトが起きるとすると、円売りが始まるから、円安がさらに加速して物価も上がる。円で暮らしている人は大変だ。一方、すでに外貨に替えていた人は、その分は損が発生しない。

 つまりは「早い者勝ち」。あなたは動きますか、それとも……。(本誌・首藤由之)

※週刊朝日 2022年8月5日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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