「『南海トラフ』のような巨大地震が日本を襲い、日本全体が壊滅的打撃を受けた場合です。復興需要が殺到し、海外からの輸入が急増します。当然、円安が加速して輸入物価が急上昇、インフレも加速することになります」(塚崎さん)

 どう転んでも預金だけでは「目減り」が避けられそうもない。それでは、どうすれば資産防衛はできるのか。塚崎さんが続ける。

「日本の外に目を向ければいいのです。インフレに強いのは外貨と株です。両方とも対象は米ドル、米株でいいと思うので、インフレに負けたくないと思ったら、預金の一部をこの二つに振り向けるのがいいでしょう」

 いわゆるリスク分散だ。円を米ドルに替えておけば、円安が原因で起きるインフレリスクは避けられる。インフレになればそのぶん売上高も伸びて企業収益が上がるから、株価も上昇する。

「もっと言えば、米ドルで保有しているとアメリカがインフレになるとドルが目減りしてしまいますから、米株一本に絞ってもいいと思います」(同)

 いきなり「米ドル」と「米株」の話になってしまったが、リスク分散は投資の理論にもかなっている。「一つのカゴにすべての卵を入れてはならない」という投資格言がある。一つのカゴだとカゴがテーブルから落ちると卵が全部割れてしまうが、複数のカゴに分けておくと「全滅」は避けられるとして、「分散」の大切さを説くものだ。投資も同じで、値動きの方向が異なる複数の資産を組み合わせて持ち、全体としてリスクを減らすのが王道だ。

「分散投資は年金のお金を運用している巨大機関投資家も採用している手法です」

 こう話すのは、「びとうファイナンシャルサービス」の尾藤峰男さんだ。

「200兆円近い資産を動かすGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本投資比率は、国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%です。公的機関が十分検討して実践している手法ですから、私たちのお金の運用にも参考にできるはずです」

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