ペットはもはや大事な家族。読者とペットの愛おしい日常のひとコマをお届けします。今回の主役は、犬のへいちゃんです。

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 独り暮らしの86歳の母の相棒は、ミニチュアピンシャー(ミニピン)の男の子へいちゃん。

 18年前、お世話になっているヘルパーさんが、1週間だけ預かってほしいと連れてきたのがへいちゃんです。

 弟さんが寮でこっそり飼っていたのが飼えなくなり、引き取ったのだそうです。家にはすでに2匹いるので……と連れてこられたとき、へいちゃんは生後7カ月でした。

 初代ミニピンを12歳で亡くした後、父を送って元気をなくしていた母をヘルパーさんが気遣ってくれたのかもしれません。

 一度返す話も出たのですが、私がお願いして母のもとに置かせてもらうことになりました。

 最初、へいちゃんはなかなか懐かず表情も乏しくて、抱っこしようとしても縮こまって隅にうずくまっていました。

 掃除機や傘など棒状の物を見ると後ずさりして怖がります。寮で吠(ほ)えると、唯一事情を知っていた寮の清掃のおばさんに、掃除機のパイプでよくたたかれていたのだそうです。

 しかし母の愛情を受けて、へいちゃんは次第に変わっていきました。抱っこされると甘えて鼻を鳴らすようになり、散歩が大好きになりました。

 近所の人たちにも、へいちゃん、へいちゃんと可愛がられています。家に閉じこもりがちだった母も明るくなり、外へ出るようになりました。

 へいちゃんはもうすぐ19歳。目も見えなくなり、耳も遠くなってしまいましたが、記憶を頼りに家のなかをゆっくりと歩き、トイレシートで用を足します。母に背中を優しくトントンされながら子守歌を聞き、毎夜眠りにつきます。

 余生を穏やかに過ごしてほしいと願っています。(札幌市東区/62歳/無職)

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週刊朝日  2022年7月1日号