個人商店が頑張る商店街は、全国から消えつつある。キーンさんは「開発が進み、日本のどの街の風景も似たようになったことを残念がっていた」(誠己さん)。日本的な光景を愛し、残したいと思っていたのだろう。
好きな旅先も、日本的な美しさに満ちていた。
「90年代に広島県の福山に講演に行った時に、地元の人に鞆の浦に案内され、とても気に入ったんです。古い姿のままの美しい景観、朝鮮との行き来にも使われた歴史。私も誘われ、2回ほど行きました」(誠己さん)
鞆の浦は後に映画「崖の上のポニョ」(宮崎駿監督、2008年公開)の舞台として脚光を浴びることになった。
日本文化を愛し続けたキーンさんは、19年2月24日に心不全で亡くなった。最後の食事は、
「刺し身、ステーキ、みそ汁、漬物でした」
(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2022年6月24日号