真田は20年に「♪惚れちまったの俺」と歌うだみ声が印象的な「恵比寿」がヒットして、レコード大賞最優秀新人賞を受賞した第7世代の一人だ。

「デビュー前から注目していました。とにかくあの声質がいい。店頭で曲をかけた時、反応が最高レベルになる。ルックスもいい。声に“色”をつけるために唐辛子を食べ、酒でうがいをしたという苦労話も心に響く。将来は氷川きよしの上をいくのではないかと私は見ている。まだ先の話になるけど、次期キング最有力だと思う」(小林さん)

 多くの演歌歌手のキャンペーンを見つめてきた前出のヨーロー堂、松永さんも「将来性なら真田君と辰巳ゆうと君が図抜けている。売り上げ的にも、ネット配信でもこの2人です。今後しばらくは山内惠介さんと三山ひろしさんがつないで、その後に次代のスターとして真田君、辰巳君が出てくるのではないでしょうか」と占う。

 業界通の見立てはある程度共通しているようだ。つまり、キング不在の期間はしばらくあるが、将来的には第7世代がキングの座を射止めるという読みだ。

 しかし、元NHKアナウンサー紅白歌合戦の司会も務め、現在もいくつもの音楽番組の司会者として演歌歌手とも交流がある宮本隆治さんは、これに異論を唱える。

「北島さん、五木さんが引退したのは紅白歌合戦という一つの番組です。多くの人はそれを歌手活動の引退と思っていますが、正しくありません。北島さんも五木さんも5月に大きな公演が予定されています。まだ現役で、今も2人が男性演歌界を牽引(けんいん)していることは事実です」

五木ひろし
五木ひろし

 そして男性演歌界の昔と今を「鉄道の路線」にたとえてわかりやすく説明してくれた。

「昔の男性演歌界は本線が2本しかなかった。北島線と五木線です。線路を走っているわけですから、後続の歌手は追い抜くのは難しかった。しかし、氷川君が3本目の線を作ったことで演歌鉄道業界は変わり始めた。これまでは国鉄2路線しかなかったものが、今は私鉄各社がいろんな車両で路線を延ばしている、そんな状態なのではないでしょうか」

北島三郎
北島三郎

 誰かが業界を引っ張っていくというのではなく、それぞれが自分の路線の魅力をアップさせて、客足を伸ばそうとしているのが今の演歌界だということだ。休業が予定されている「氷川線」に代わり、近い将来、“路線価”が上がりそうなのが「第7世代線」ということなのかもしれない。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2022年5月20日号