一番人気のホルモン定食
一番人気のホルモン定食

 同店のように、長く経営を続けるうち、地域になくてはならない存在として大事にされるようになったドライブインは少なくない。北海道産の食材のネット販売を手がける北海道アグリス(札幌市)は4月、体力面の不安から後継ぎを探していた老舗の山部ドライブイン(北海道富良野市)の経営を引き継いだ。地域からなくしてはいけない、という使命感がある。

 北海道アグリスの佐藤拓代表(50)は言う。

「お客さんから『お店が残り、ほっとした』というありがたい言葉を頂いています。おかげさまで今は手が足りないほど忙しい。前オーナーの思いをしっかりと引き継いでいきたい」

 個人や企業が運営するドライブインは、店の規模や形もさまざまだ。施設や運営方法に一定のルールがある道の駅や、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、さらにショッピングセンターやファミレス、コンビニといった全国チェーンに比べ、経営の自由度は高いと言える。

 実は日本ドライブイン協会(現・日本観光施設協会)は、かつて道路行政を担う建設省(現国交省)から、道の駅事業への積極的な参画と協力を求められたことがあったという。だが協会側は申し出を断った。同省から求められた駐車場やトイレの24時間無料提供といった負担を、会員会社に強要するのは難しい、というのがその理由だったという。

 当時は協会内で賛否が分かれ、今でも当時の判断を惜しむ声がある。だが、店主や地域の個性が豊かな点は、ドライブインの大きな魅力でもある。行政の呼びかけに素直に応じていたら、今回紹介したようなドライブインの姿形は変わっていたかもしれない。この先の行楽シーズン、立ち寄り先としてドライブインを検討してみては。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2022年5月20日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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