佐々木朗希投手
佐々木朗希投手

 新たな球界のエース誕生か──。そう予感させるには十分すぎる圧巻の投球だった。大谷翔平に続く“怪物”が、完全試合でついにそのベールを脱いだ。千葉ロッテの佐々木朗希、その“すごさ”に迫った。

【写真】故郷の岩手県陸前高田市の役所には快挙を祝う横断幕が掲げられた

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「正直意識していなかった。(捕手の)松川を信じて投げました」

“令和の怪物”佐々木朗希投手は試合後のインタビューでそう語った。今月10日のオリックス戦。28年ぶりの完全試合を成し遂げた。プロ野球新記録の13者連続奪三振。タイ記録の1ゲーム19奪三振。記録ずくめの試合だった。

 佐々木は、岩手県の大船渡高校在学中に最速163キロを記録し注目を集めた。2019年のドラフトで4球団が1位指名し競合。鳴り物入りでプロの世界に飛び込んだ。だが、体づくりに主眼を置いた球団の育成方針で、1軍デビューを果たすのは2年目の21年シーズン。登板数も11試合にとどまっていた。

 3年目の今季、先発ローテーションの一角を任され、16日現在3試合に登板し、2勝0敗、防御率は1.57と好成績を残している。

 佐々木の“すごさ”はどこにあるのか。

 統計学的にデータを分析する「セイバーメトリクス」。この手法で球界の分析を行う株式会社DELTAのアナリスト、大南淳さんは、佐々木の数字を「異次元としか言いようがない」と話す。

 佐々木のすごさが表れている数字としてまずあげたのが「空振率」だ。今シーズンの佐々木は22.4%を記録する。これは球界を代表する投手である千賀滉大(ソフトバンク。以下SB)と山本由伸(オリックス)のそれぞれ15.4%、15.3%(共に今シーズン)と比較しても、突出した数値になっている。シーズン別の1位は17年に記録したサファテ投手(当時SB)の22.0だが、これをも上回る。サファテは、先発の佐々木と違い、イニング数が短い抑え投手だ。大南さんは「いまの佐々木はサファテが9イニング投げているのと同じです」と言う。

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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