「よかれと思って家族がリフォームを始めてしまう例もありますが、末期の段階での身体の状態は刻一刻と変化するもの。寝たきりの状態になり、リフォームした意味がなくなってしまう可能性もあります。本人がどれぐらい動けるのか、それによって改修すべきかどうか、改修する場合の度合いも変わってきます」

 例えば本人が歩ける場合であれば、主にトイレ、お風呂、廊下を中心に手すりをつける。横になっていることが多く、トイレやお風呂に介助が必要なら、転倒リスクを減らすために、動線になるべく物を置かないようにしていれば、もう手すりは必要ないかもしれない。

「住宅改修の規模や、何をどこまでやるかといった判断は、病気による今の症状や状態、さらに今後出現するであろう症状や状態を加味した暮らし方を想像して、メリットが大きいと感じるものを選んだらいい。何を快適と感じるか、何を優先したいかを考えてみるとよいでしょう」(前出の牧野さん)

 年を取れば、住みやすさだけでなく、安全面も重要な課題になる。これまで問題なく使えていた自宅が使いにくいと感じたら、今の自分が住みやすい状態にアップデートすべきタイミングかもしれない。(フリーランス記者・松岡かすみ)

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週刊朝日  2021年12月17日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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