生前に寄付先と直接、契約を結んでおき、亡くなったら約束どおり財産を渡す形や、銀行などと信託契約を結び、死亡後に寄付してもらう方法もある。

 司法書士や弁護士らでつくる一般社団法人「日本承継寄付協会」(文京区)が、50~70代の男女1千人を対象にネットを通じてアンケートした昨年8月の数字では、自分が残す財産から具体的に、もしくはなんとなく寄付を考えたことがある割合は22.9%だった。

(週刊朝日2021年12月3日号より)
(週刊朝日2021年12月3日号より)

 また、認定NPO法人「シーズ」(港区)が国税庁に開示請求して得たデータによると、公益法人への遺贈寄付は19年で102件、相続人が故人の遺産から寄付したケースは647件あった。14年からそれぞれ約2倍、約1.9倍。控除対象にならない法人への寄付は含まれていないが、増加傾向が見てとれる。

 関心が高まる背景のひとつに、少子高齢化がある。単身や夫婦2人だけの世帯が増え、親族以外へ財産を寄付することを考える人が多くなった。相続人がいない場合、故人の遺産は国庫に入る。相続人がいても疎遠だったりして、社会に役立つことに使ってほしいと考える人もいる。

 公益財団法人「日本盲導犬協会」(横浜市)でも、ここ数年、遺贈寄付を受けるケースが増えた。01~05年度は年5~6件前後だったが、16~20年度は平均で年24件あった。

 協会は収入の9割超を企業や個人からの寄付で賄っている。このうち、遺贈寄付が占める割合は01~11年度の平均15%から、11~20年度は30%超と存在感が増している。渉外部で遺贈寄付を担当する横江湧真さんは言う。

「当協会は寄付を考える人に盲導犬の育成、訓練の場を実際に見てもらう点が特徴です。目にすることでわかってもらえる部分も少なくないと思います」

 6年前に遺贈寄付をすると決めた首都圏在住の女性も、訓練センターを実際に訪ねたことが決め手になったという。対応した横江さんは振り返る。

「人生でつらいこともたくさんあったが、その時々で犬に癒やされ、助けられたので、ぜひ応援したいと話してくれました。女性には子どももいましたが『社会貢献のために使いたい』という思いが強かったそうです」

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