※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 亡くなった後に残した財産を社会貢献団体などに寄付する「遺贈寄付」をする人が増えている。やりようによっては、社会をよくしたり、大きく変えたりすることにつながるかもしれない。財産を相続人以外へ残す選択肢を考えてみよう。

【調査結果】「遺贈寄付」を知っていますか?

*  *  *

 クラウドファンディング(CF)サイトの大手、「READYFOR(レディーフォー)」(東京都千代田区)は今年4月、遺贈寄付の窓口をもうけ、寄付を考える人の相談に乗り、意向に沿った団体とマッチングするサービスを始めた。

 三菱UFJ信託銀行と業務提携を結び、遺言書の作成や執行まで支援できる体制も整えた。新たなサービスを始めた理由を、担当者はこう話す。

「もともと、CFは従来の資本主義の仕組みでは難しい領域にお金が回るようにするのが目的です。一方、社会貢献団体の中には規模の小さい組織が多く、受け入れ態勢が十分でないところもある。2011年3月の事業開始以来、累計2万件に及ぶ案件を手がける中でNPOや大学、医療機関などさまざまな団体と培ってきたネットワークが強みです。寄付者と団体の双方の力になりたい」

 遺贈寄付が成立すると、レディーフォーは寄付額の10~15%程度を、寄付を受けた団体から手数料としてもらう。すでに200件以上の問い合わせがあり、がんで亡くなった寄付者が残した財産を、がん患者の支援団体へ寄付するといった実績が出始めているという。

 担当者によれば、寄付先として特定の団体を最初から「決め打ち」している人は少数派。CFを手がける際、団体の信用度を評価してきたノウハウを生かし、寄付先として一定の信頼度を満たした団体を紹介できる点が強みという。現時点で70を超す支援先をホームページで公開し、「相談してもらえれば、支援先の顔が見える寄付が実現できます」と力を込める。

 遺贈寄付とは、故人が残した遺産を、主に遺言書にもとづいて特定の個人や団体に寄付する仕組みだ。遺言書にもとづかないものの、相続人が故人の生前の言葉や想いをくんで寄付することを「遺産(相続財産)からの寄付」と呼んで区別することもある。

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら
次のページ