(週刊朝日2021年11月19日号より)
(週刊朝日2021年11月19日号より)

 いざ相続が発生したとき気になるのが、相続する際に発生する相続税。相続税の申告書の提出期限と相続税納付の期限はともに、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10カ月以内と定められている。ただし現在は、コロナの影響から、延長申請書を提出することで延長が認められるようになっている。納付の際は、納付期限までに現金で、かつ一括で納めるのが原則だ。相続税を支払う義務が生じるのは、遺産の総額が基礎控除額と呼ばれる一定の額を超えた場合。基礎控除額は、3千万円+(600万円×法定相続人の数)によって算出される。例えば、法定相続人が2人の場合は、基礎控除額が3千万円+(600万円×2)=4200万円ということになり、遺産の額が4200万円以下であれば支払う必要はない。

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 また、配偶者に認められている税額軽減措置や、所有する土地の評価額を軽減する「小規模宅地等の特例」などを適用すると、基礎控除を超える相続財産がある場合でも、相続税が大幅に軽くなるほか、ゼロになることも少なくない。こうした制度によって相続税がゼロになる場合でも、申告は必要で、申告書でそれらを適用していることを証明する必要がある。

 ただ、一昔前のように「相続税がかかるのは、多くの財産を持つ富裕層だけ」ではなくなってきているのが現状だ。国税庁の調査(「令和元年分相続税の申告事績の概要」)によれば、相続税の全国平均額は1714万円。相続税の課税割合は2015年の税制改正前と比べて約2倍となり、全国平均では8%台が続いている。ただし東京都は16.3%と全国平均の約2倍で、亡くなった人の6人に1人が相続税を納めていることになる。さらに納める税額も東京都の平均は3030万円と全国平均より1千万円超高い。大都市圏は全国平均よりも相続税を納めている人が多く、金額も高い実態がうかがえる。

 この相続税を少しでも抑えようとするなら、生前から対策しておく必要がある。税額を軽減するために、相続税の対象となる財産を評価額の低いものに換えたり、非課税の財産を増やしたりすることだ。具体的には、(1)現金や預貯金を不動産に換える(2)宅地を貸宅地にする(3)被相続人が生命保険に加入する(4)墓地などを生前に購入する(5)生前贈与を利用する、などの対策がある。ただし、節税対策を進める際には、注意も必要だ。税理士の大矢亜希子さんは言う。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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