「大原則として、相続税の納税資金を現金で確保した上で節税対策を行うこと。現金や預貯金を土地に換えておくことは有効な節税対策の一つですが、相続税を支払う段階になって手元に金銭がないと、相続税を支払うために、地価の高いときに買った土地を安値で売らなければならなくなるという事態が起こる可能性もあります。また、施設に入るなどの可能性が想定される場合には、施設入居にかかる費用分も現金で残しておくこと。残された生活と相続にかかる税金分を考慮して、節税対策を考えるべきです」

(週刊朝日2021年11月19日号より)
(週刊朝日2021年11月19日号より)

 さらに今、特に注意したいのが、新型コロナウイルスの影響による状況の変化だ。相続をめぐる状況の中で、コロナの影響で変わったこともある。特筆すべきは、コロナによって病院や施設などにいる人に会うことが難しくなっていること。例えば公正証書遺言を作る際には公証人と遺言を作成したい人との対面が必須だが、これまでのように病院や施設に公証人が出張することが難しくなっているため、遺言書の作成に難航するケースも出てきている。また、各種必要書類をそろえる際にも、コロナ以前より時間がかかりがちだという。

「だからこそ以前にも増して、元気なうちから早めに準備したほうがいい。対面が必要なものは特に、病院や施設に入る前に準備するよう心がけて」(司法書士の児島充さん)

(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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