(週刊朝日2021年10月1日号より)
(週刊朝日2021年10月1日号より)

「夫は友人とのカメラ旅行が好きなんですが、尿漏れが気になるようになってから出かける数も減りました。新幹線やバスなど、長時間同じ場所に座っての移動だと、股間の蒸れる感じが嫌なのだそうです。においが周囲に漂ってしまっていないかも心配だそうで……」

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 そう語るのは神奈川県に住む61歳の女性。5歳年上の夫が尿漏れに悩まされているという。今はコロナ禍の影響で旅行は自粛中。夫の思い悩む姿は以前ほど見かけなくなったが、日常生活でも笑顔が減っているのが気がかりだという。

(週刊朝日2021年10月1日号より)
(週刊朝日2021年10月1日号より)

 こうした尿失禁にまつわるトラブルを抱えている男性は非常に多い。男性の尿漏れでよく耳にするのは、「尿の切れが悪くなった」「残尿感がある」といったちょっとした悩み。排尿を終えたと思ってズボンをはいたら、時間差でじわりと漏れ出てくるアレだ。

 男性の排尿障害の専門家で、福島県立医科大学泌尿器科学講座の小島祥敬教授はこう指摘する。

「男性は陰茎があることから尿道が長く、尿が残りやすい。排尿時にしっかり陰茎を振らずにいると尿道内の残尿による漏れにつながります。これは壮年期、高齢期に限らず、30代など若年からも見られる傾向です」

 10代、20代のころは残尿感はなく、出し切れていたはずなのに、なぜなのか。小島教授によれば、排尿の構造は尿をためる膀胱がポンプで、尿道がホース状の蛇口。加齢とともに膀胱の機能が衰えてくると、ポンプ作用が力強く機能せず、尿道に尿が残ってしまう。ポンプは中途半端に押しても中身は出きらない。

 ポンプの機能の衰えに加えて、前立腺の存在も尿失禁に大きく関わる。

「前立腺肥大症も尿失禁と密接な関係があります。前立腺は、ポンプ、蛇口に対してコックに例えるとわかりやすいでしょう。前立腺が肥大すると尿道を圧迫し、尿が出にくくなります」

 50、60代から患う人が増加する前立腺肥大症は、進行すると膀胱の中に尿がたまったままとなり(膀胱内の残尿)、行き場のなくなった尿がちょろちょろと漏れ出る「溢流性尿失禁」を引き起こす。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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