平井卓也デジタル改革担当相 (c)朝日新聞社
平井卓也デジタル改革担当相 (c)朝日新聞社

 実に、6分47秒。菅義偉首相の問わず語りは「長いよ!」というヤジが飛んでも延々と続いた。

 6月9日、国会で2年ぶりに党首討論が開かれた。立憲民主党の枝野幸男代表に与えられた時間は30分。ヤジが飛んだのは、その約4分の1を菅首相が“強奪”したからだ。

「57年前の東京オリンピック大会、高校生でしたけども、いまだに鮮明に記憶しています。例えば、東洋の魔女と言われたバレーの選手、回転レシーブっちゅうのがありました」(菅首相)

 入念に準備したのだろう。菅首相は時折、手元にある付箋(ふせん)が貼られた資料に目を落とす。マラソンのアベベ選手などの“思い出話”で、時間はむなしく過ぎていった。

 歴代の首相の発言スタイルを研究する米ユタ大学の東照二教授は言う。

「スピーチに自らの物語を入れるのは悪いことではない。ただ、枝野氏との議論では二人とも相手の意見を引き込んで再質問し、論点を明確化させることをしなかった。これでは討論になりません」

 多くの国民が知りたいのは、大会期間中にどの程度まで感染者数を抑えるのかというシナリオだろう。ジャーナリストの二木啓孝氏は言う。

「具体的な数字を聞いても、菅首相は『感染対策をしっかりやる』という『手段』しか説明しない。数字を設定すると、失敗した時に責任を問われるからです」

 無責任なのは菅首相だけではない。最近では、こんな暴言もあった。

「ぐちぐち言ったら完全に干す」

 時代錯誤な発言の主は平井卓也デジタル改革担当相だ。今年4月、東京五輪・パラリンピックに向け国が開発したアプリの事業費削減のため、開発事業者を“脅す”よう内閣官房の職員に指示した。6月11日付の朝日新聞の報道で明らかになった。同紙の取材に平井氏は「国会で野党から、契約額が高いと迫られていた」と、野党に責任転嫁したという。コラムニストの小田嶋隆氏は言う。

「巨大な公共事業である行政機関のデジタル化について、管轄する大臣の『完全に干す』という言葉は、『味方に恩恵を与え、敵は排除する』ということ。日本の行政機関が、独裁者が支配する国と同じレベルだと明らかになった」

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