「海外大から本学の教育が認められて、指定校推薦につながりました。沖縄空手が必修で多くの生徒が黒帯を取るほか、ボランティア活動も授業で取り組み、通訳や学習支援のボランティアなどをしています。学力だけでなく、こうした人間力育成活動を通じて、芯のある生徒を育てています」

 公立校からも海外大に合格者を多数出している高校が神奈川県にある。市立横浜サイエンスフロンティアだ。2009年に横浜開港150周年を記念して開校した。世界的にも著名な科学者である浅島誠東大名誉教授が常任スーパーアドバイザーを務めている。

「海外大を特別目指そうと目標設定しているわけではありません」と冨樫哲一副校長は言うが、昨年の合格者は延べ11人、一昨年も同14人が合格した。その理由について冨樫副校長はこう見る。

「SSHの取り組みの中で海外と交流していることが一つの要因です」

 SSHとはスーパーサイエンスハイスクールの頭文字を取ったもの。文部科学省では国際的な科学技術の知識を持った人材を育てるために、先進的な理数教育を実施する学校をSSHに指定し、支援している。

 同校ではOCPDという独自の授業を実施している。オーラル・コミュニケーション・プレゼンテーション・ディベートの略で、科学者に必要な発表力を養っている。2年時には全員がマレーシアに行き、そこで自ら研究してまとめたものを英語で発表するなどしている。

 選抜された生徒がアメリカのIT企業アップルやスタンフォード大などを訪問し、最先端で活躍する技術者や研究者と交流する機会もある。アメリカのトーマスジェファーソン高にサイエンス研修に行ったり、海外の大学に短期留学したりする生徒もいる。冨樫副校長はこう語る。

「サイエンスエリートを養成するのが目標なので、必然的に海外の最先端の取り組みに目を向けることになります。こうした活動の中で海外大を目指す生徒が増えているのだと思います。また、海外大出身の教員も本校には複数いるので、適切な進路指導ができていることも大きいと思います」

(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2021年4月16日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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