AICJ中の理科の授業の様子(学校提供)
AICJ中の理科の授業の様子(学校提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大で海外渡航が難しくなっているのにもかかわらず、海外の大学への進学熱は依然として高い。海外大に強い高校はどのような対策と授業をしているのだろうか。

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「今年はディレイを利用する生徒が多いですね」

 これまで海外大に多数の合格者を出している中高一貫校のAICJ(広島市)で広報を担当する佐々木真一さんは、そう明かす。

 ディレイとは、大学合格後すぐには入学せず、一定期間を経た後に入ることができる仕組みのことだ。海外大では一般的な制度で、1年後に入学する場合が多いという。佐々木さんは続ける。

「新型コロナの感染拡大が収まっていないので、合格しても入学を1年先送りしようと考える生徒が増えています。まずは日本の大学に入り、その後に留学を考える生徒も多いです。海外大への進学熱は、失われていません」

 同校は昨年、延べ44人が海外大に合格した。しかも、名門校が並ぶ。特にイギリスのユニバーシティー・カレッジ・ロンドン、カナダのトロント大、シンガポール国立大は、イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」の世界ランキングによると、東大より上位に位置する大学だ。

 なぜ海外大に強いのか。合格するのは「IBディプロマコース」の生徒だという。定員は1学年25人。内部進学者は20人程度で、残りは高校からの入学者だ。

 このコースでは、英語で学ぶ授業の割合が90%に上る。国語以外は、英語を母国語とするネイティブ教員らによる授業だ。多くの海外大が使用する、国際バカロレア(IB)と言われる大学入学資格を取ることを目指している。岩本知士副理事長は、こう話す。

「国際バカロレアの成績が良いので、結果的に世界ランキングの高い大学をはじめ、多くの海外大に合格できています」

 内部進学者の語学力は、中学で徹底的に鍛えられる。週34時限あるうちの14時限、約4割の授業がネイティブ教員らによって英語で行われる。その科目は英語のほか、数学、理科、体育、音楽にわたる。中学卒業までに英検準1級(大学中級程度)の取得を目標にしている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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