延期になった歌会始など皇室の新年行事を3月に終えたあとのタイミングに、説明がなされるとみられている。

 そして天皇誕生日の会見のメインとなったのは、令和の皇室の象徴とも言える、コロナ禍によるオンライン公務である。

 東日本大震災10年のタイミングで予定されていた、2月16日のオンライン公務は、宮城、福島両県で震度6強を観測した地震で当面見合わせとなったが、これまで数多くのオンライン公務を積み上げてきた。

 2月12日の夜には、世界の水をめぐる衛生問題について話し合う国際的な会合が、オンラインを活用して開かれ、天皇、皇后両陛下も出席した。

 陛下が皇太子時代の2004年から10年余り活動した国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の元委員ら30人余りが、安全な飲み水の確保などについて話し合ったものだ。

 会合は非公開。陛下と同時期に議長を務めたオランダのウィレム・アレキサンダー国王も出席。陛下は特別来賓として流暢な英語で、

「私たちは水問題の解決に向け、連携し結束していく必要があります」

 とスピーチした。

 陛下の皇太子時代から水問題の相談役を務めていた尾田栄章さんも、会合に出席していた。

「陛下も雅子さまも、いきいきとした表情をしておられた」

 両陛下とともに、会合に同席していた政策研究大学院大の廣木謙三教授もこう話す。

「議論好きなメンバーが集まったこともあり、陛下が発言なさる機会は多くありませんでした。しかし、他の出席者のスピーチが始まる前から、陛下も雅子さまも、ペンを手にとり、熱心にメモをなさっていました」

 昭和や平成の時代、天皇は人前でメモをとる姿を見せなかった。

 昭和天皇の理髪師は、理髪のさなか、昭和天皇が目を閉じて、ずっと言葉を反芻する様子を目にしている。相手の話を全身に刻み付けるように記憶する作業であったのだろう。

 令和の天皇は、皇太子時代から海外の訪問先の住民や海外の首相と一緒に携帯電話の写メに写り、SNSにアップされるなど、「皇族のあるべき枠」を自然体で超えてきた。

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じわりと浸透する「令和流」