「令和流」がじわりじわりと表に出てきた印象だ。今回の会合は、水・衛生供給をどう進めるかなど、専門的な内容を含んでおり、廣木教授は、事前に会合に向けた両陛下への説明役を担当した。

「このところは、どうなっているのですか」

「それは興味深いです。よくそこまで調べて進んでいますね」

 水問題の研究者である陛下は、調査や情報収集の苦労や分析の成果などをよく理解していた。研究者の苦労を認めたうえで、国境を超えて問題に取り組むべき姿勢を見せていたという。

 天皇のお言葉で「国民」と呼びかけずに、国籍の垣根を取り払い、「みなさん」と呼びかけるのも、令和流だ。

 廣木教授も国境や国籍を意識しない、陛下の視点を強く感じている。

「講演などでは、日本はもちろん、世界各地で起きた災害などに言及し、被害を受けた人びとへの言葉をお忘れになりません。学生時代の運河の研究から始まり、水による災害や、貧しい国では、水をくむ役目を担う子どもや女性が教育や仕事の機会を奪われることなど水に関わる社会の問題まで捉えておられます」

 登山に例えるならば、山の峰をひとつ越えると次の峰を見つけるように、天皇は研究が進むたびに新たな課題を見つめる視点を広げてきたと話す。

 両陛下が積み上げつつある公務も、人びとの心に根づきはじめた。

 両陛下は昨年7月に、経済的に困窮する家庭や子どもを支援する団体の代表と面会した。困窮する子どもや家庭を支援する「あすのば」代表理事の小河光治さんは、「両陛下との面会が報道されたことで、困っている子どもや家庭からのアクセスが増えました」と話す。

「キッズドア」理事長の渡辺由美子さんは、「オンラインで英語を学ぶ子どもたちからの感謝の言葉をオンラインで両陛下に届けることができないかと、準備しているところです」。

 令和の皇室は、どのような姿を見せていくのか。(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2021年3月5日号