座りすぎによる健康問題を研究する、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗さんは、

「週末にジムに通って体を動かしているから自分は大丈夫だと安心している人もいますが、座りっぱなしによる害は、残念ながら週末に少し体を動かすぐらいでは十分に相殺されません」

 と話す。実際、1日8時間の座りっぱなしによる害をなかったことにするためには、毎日1時間以上の運動をしなければならない。

 ところで、なぜ座りすぎが悪いのか。その理由について岡さんは、「太ももやふくらはぎの筋肉を動かさないことが問題」と指摘する。

「太ももの筋肉は、使うことで血糖値を正常に保ったり、脂肪の分解を促したりする働きをしますが、座りっぱなしで動かさないでいると、筋肉にスイッチが入りません。その結果、糖尿病や肥満につながりやすいのです」

 さらに、座っている姿勢を思い浮かべるとわかるが、股関節や膝(ひざ)関節が曲がっている上、太ももの裏がイスに押された状態になる。それだけ血液がドロドロになりやすく、血圧も上がりやすい。

 死亡リスクだけではなく、がんや認知症、心の病の発症リスクが上がることも報告されている。これを回避する方法は、「ちょこちょこ動くこと」と岡さん。

「問題はずっと座っていることなので、30分に1回は立ち上がって体を動かし、下半身の筋肉にスイッチを入れることが大事。ちょっとした用事を片付けるとか、ストレッチや屈伸運動をするとかを心がけてください」

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2021年2月5日号より抜粋