※写真はイメージです (GettyImages)
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 ついに新型コロナウイルスワクチンの接種がスタートする。米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンを12月2日、英国政府が承認。米国でも10日に食品医薬品局(FDA)のワクチン諮問委員会が実用化に向けた会合を開く。

【世界で開発が進められている主なワクチンはこちら】

 ファイザーは11月、臨床試験で95%の予防効果と、重篤な副作用はみられなかったとする最終結果を発表した。そもそも第3相試験を始めたのは7月末で、約4万人の被験者が参加。このうち偽薬である“プラセボ”が半数の約2万人いるため、実際にワクチン接種を受けたのは残りの約2万人だ。最も早い段階で2回のワクチンを受け終えた人でも、まだ3カ月程度しか経過していない。

 大阪大学免疫学フロンティア研究センター招聘(しょうへい)教授の宮坂昌之医師が懸念を示す。

「確かによく効くワクチンであることは間違いなさそうです。けれども、2万人程度の試験では10万人に1人とか、100万人に数人起きる重篤な副作用については何もわかりません」

 接種の広がりとともに、思わぬ副作用が起きかねないと危惧する。

「例えば、(強いアレルギー反応の)アナフィラキシーショックなどは接種後まもなく起きますが、100万人に数人です。数週間から1カ月程度で起きてくる脳炎や神経障害に関しては一層みえにくい。長期的には肝障害や腎障害、多発性硬化症なども、過去にはワクチンによって誘発されたという見方もあります」

 これでは、安全性についてほとんど情報がないと言っていいくらいだ。

 ファイザーのワクチンが「効きすぎることが心配だ」と言うのは、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師だ。

「95%もの有効率は従来の常識を超えており、それだけ体内で強い免疫反応が生じていることになります。新型コロナ感染は免疫異常を誘導し、一部の患者に神経疾患や1型糖尿病、心臓の筋肉に炎症を起こす心筋炎などを発症させることもわかっています。ワクチン接種でも免疫異常が起きる恐れはないか、やはり最低でも半年から1年程度は観察期間をおかないとわからない」

 ファイザーのワクチンは、日本に6千万人分が供給される予定だ。だが、米国のように約1500万人が感染し、約30万人もの死者を出すほどの状況には至っていない。ワクチン接種はしばらく、慎重に経過をみたほうがいいかもしれない。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2020年12月18日号