多くの場合、薬を服用後1~2週間ほどで幻覚や妄想は弱まり、次第に落ち着きを取り戻していくという。

 また、治療を成功に導くには「休養」も欠かせないと村井医師は言う。

「患者さんは幻覚や妄想で疲弊し、音や光などの刺激に敏感になって十分な睡眠を取れていません。病気が重い時期に不眠や過労でさらに無理がかかれば、症状の悪化を招いて治りにくくなってしまいます。『今は休養の時期』と割り切り、必要に応じて睡眠薬や抗不安薬なども使いながら、静かな環境でゆっくり休むことが大切です」

■入院か外来か 選択も重要になる

 症状が強く現れる急性期はとくに、入院か外来か「治療の場」の選択も重要だ。村井医師は言う。

「急性期だからといって必ずしも入院が必要となるわけではありません。近年は薬物療法の進歩などで症状をコントロールしやすくなり、以前に比べると通院で治療するケースは増えています」

 一方、入院は仕事や家事などふだんの生活から離れることになるが、そのぶんしっかり休養をとることができ、治療のプラスになる場合もある。医療者側も、病状をつぶさに把握でき、薬の種類や量を調整しやすい。

 とくに「症状が重く、日常生活が維持できない」「服薬や休養など治療に必要な最低限の約束を守ることが難しい」「本人が入院を希望している」「支える家族がそばにいない」という場合は、入院を選択したほうが、安心して療養に専念できる。

 難しいのは、入院が必要なのに本人の同意が得られないケースだ。統合失調症では病気が始まってしばらくは本人に病気だという自覚がほとんどなく、幻覚や妄想が出ていても治療に応じないことが多い。しかたなく家族が何とか病院へ連れていき、医師の判断で閉鎖病棟や保護室に入院になることもある。精神科の入院は、閉じ込められる、自由を奪われるというイメージが強く、それも必要な治療にたどり着けない一因となっている。村井医師はこう説明する。

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