帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
講談師の田辺鶴瑛さん (c)朝日新聞社
講談師の田辺鶴瑛さん (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「観音さまとのつきあい」。

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【宗教】ポイント
(1)宗教にあまり関心がない、というより好きではない
(2)一方で、長らく観音さまとつきあっている
(3)私にとって、観音さまは虚空を体現するもの

 私は宗教には、あまり関心がありません。というよりも、好きではないのです。

 前回も登場した統合医学のオピニオンリーダー、アンドルー・ワイル博士はこう言っています。

「宗教は霊性を制度化しようとする。宗教の名においておこなわれていることの多くは、個人の安寧というよりは制度の永続化にかかわるものである。宗教的であろうとなかろうと、人は霊的な生活をいとなみ、霊性の健康におよぼす影響を探究することができるのだ」(『心身自在』上野圭一訳、角川文庫)

 まさにその通りだと思います。ところが、その考え方と矛盾するようですが、私は長らく観音さまとつきあっています。

 30年ほど前から病院の自室の棚には観音像が3体鎮座しているのです。いずれも座位で15~20センチぐらいの丈。中国の方のお土産です。その3体の後ろには亡き家内の写真を飾っています。生前、十分なことをしてやれなかった家内も観音さまとして崇(あが)めることにしているのです。

 自宅の机の上にも観音さまの絵が額に入って鎮座しています。やはり30年くらい前に、講談師の田辺鶴瑛さんにいただきました。左に微笑(ほほえ)んだ観音さまの顔が描かれ、右に「きっと、うまくいく」と書かれています。

 観音さまは正式には観音菩薩(ぼさつ)と言います。菩薩とは悟りをひらくために修行中の人を言うのですが、観音菩薩はすでに悟りをひらいていながら、我々のところに降りてきて、救いを求める人たちを救済してくださるありがたい存在です。三十三身に姿を変えて、私たちを救うのですが、その威力は絶大です。法華経の第二十五章「観世音菩薩普門品」には「大火の中に突き落とされても、観音菩薩のことを忘れなければ、焼かれることはない」「大洪水にのみ込まれても、観音菩薩の名を称(とな)えれば、たちまち浅いところにのがれることができる」とあります。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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