その後は新天地を求め、ベトナムに渡ったという。

「日本はいったんそういうことがあると、次に商売はできない。僕も60歳なので、いまさら就職というのも無理。2年間の間に会社の資産も失い、自宅も競売にかかるほど。じゃあ事業を起こしましょうということで、査察を受けている間に新しい会社をつくっていいかを国税に聞くと『自由にどうぞ』と言われた。それで、色々とツテもあるベトナムに新天地を求めた。昔からの知り合いをベトナムに駐在させて、燃料用の木質ペレットを輸入していたんです」

 また、ユースビオ社の社名が報道された4月27日、報道陣などが確認を取ろうと同社の登記簿を取得しようとしたが、法務局では「登記中」という理由で確認できなかった。この一件も、同社についての様々な憶測が飛び交う要因の一つとなったと思われる。樋山社長はこう説明する。

「最初にマスクを輸入するとき、もともと商売するつもりがなかったから定款にある会社の『目的』の項目に書いていなくて、通関で引っ掛かる恐れがあった。その時、政府の担当者と相談して、いとこの会社が生け花などの輸入をしていたので、ベトナムからの輸出の作業はその会社にお願いして何とかなった。3月末に4月分も輸入することになり、手続きが煩雑なので今度は定款の中にマスク輸入を入れてくれ、と担当に言われたので、登記変更の手続きをしていた。それは昨日(27日)で終わりました。一昨日に手続きが終わっていれば騒がれなかったのに、一日遅くて騒がれた。登記簿がとれないペーパー会社とか言われていますが、今は登記簿を見られますよ」

 本誌が4月28日に登記簿で確認すると、確かに4月1日の日付で、「目的」の項目に「貿易及び輸出入代行業並びにそれらの仲介およびコンサルティング」が追加されたことが記録に残っていた。

「うちの福島の事務所が平屋で小さいということで疑っている人がいますが、テレワークの時代だし、うちの事業メインはベトナムにあるので、携帯とタブレットとがあれば、いまどこでも仕事はできます。こんなところが受注できるわけがない、という人はビジネスセンスがないですよ。福島の会社はここに20年以上もいて、大家とも仲良しだし、友達もいっぱいくるからいるわけで。ネットではみんな事情も知らず非難していて、わけがわかっていない。そういう人たちとはしゃべりたくない。勝手にしろですよ」

 樋山社長は最後に「取材はもう受けない」と本誌に語った。

(本誌 吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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