「様々な免疫細胞を数値化して年齢による免疫力の強さを比較したところ、最も免疫力が高いのは思春期。そこからぐんと下がり、40代では半分、70代では1割まで落ちていたのです」

 持病がある高齢者はもっと免疫力が下がっている。 

 だが、「免疫力を上げることはできる」と大谷医師。

「ポイントは、睡眠、食事、運動、ストレスをためない生活の四つです」

■手のひらを15分 太陽に当てる

 睡眠は、時間が短いと風邪を引きやすいため、7時間を目安に。十分にとれないときは昼寝などで対応を。

 食事では、朝食を欠かさないこと。ご飯やパンなど炭水化物を多くとっている人は、たんぱく質を意識してとりたい。ビタミンやミネラル、食物繊維も必要だ。

「なかでもビタミンDは、インフルエンザや風邪、肺炎などの呼吸器感染症を予防するというデータが出ています。ビタミンDはキノコや魚に含まれるだけでなく、日光を浴びることによって、体内で作ることもできます。1日15分程度、手のひらを太陽に当てるだけで十分です」(大谷医師)

 運動では適度に体を動かすことが、ストレスに対しては「笑う」ことが、免疫力アップにつながる。

 在宅診療で患者を多く診ている前出の新田医師も「食事が重要」と言う。

「なかでもたんぱく質が大事ですね。免疫細胞などの材料になるからです。食事をきちんととれている人は元気です。血液中のアルブミン(たんぱく質)の量を見ても高くなっています。低栄養の人は感染症にかかりやすいです」

 こうした生活習慣の改善による免疫力アップは、一般的な肺炎対策だけでなく、新型肺炎やインフルエンザに対する防御にもなる。

 しかし、それでも肺炎になってしまったら──。

 大事なのは、早期発見・早期治療だが、前述したように高齢者では肺炎がわかりにくい。

 前出の山本医師は、

「高齢者の直腸内の温度である深部体温は、若い人よりも1度以上低い。37.5度の微熱でも肺炎を疑ったほうがいい」

 と指摘する。

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