2月28日に死亡した和歌山の男性は、医師や患者の感染が相次いだ済生会有田病院に一時入院していた (c)朝日新聞社
2月28日に死亡した和歌山の男性は、医師や患者の感染が相次いだ済生会有田病院に一時入院していた (c)朝日新聞社
中国疾病対策センターが公開した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
中国疾病対策センターが公開した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真

 新型肺炎の脅威が騒がれている一方で、見落とされがちなのが風邪やインフルエンザ。高齢者にとってはこちらもまったく油断はできない。「こじらせ肺炎」で死に至るリスクも高い。いずれの肺炎も、早期発見が重要であることに変わりはない。ちょっとした兆候に気づくかが、生死を分ける可能性がある。

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 2月28日、新型コロナウイルスに感染した和歌山県の70代の男性が死亡した。この時点で国内の感染者の死者は計5人。いずれも高齢者で、明らかにされている3人の死因は肺炎だ。

 高齢者の呼吸器疾患に詳しい、東京都健康長寿医療センター呼吸器内科部長の山本寛医師はこう話す。

「新型肺炎に限らず、肺炎では免疫力が弱い高齢者や持病がある人が亡くなりやすい。肺炎になると、最初は咳や痰、呼吸困難が出ますが、ウイルスや細菌が血液に乗って全身に回ると、ショック状態や多臓器不全を起こすことがあります」

 炎症が炎症を呼んで制御不能の状態におちいると、救命は難しいという。

 中国疾病対策センターが発表した大規模調査によると、80代以上の死亡率は14.8%。6~7人に1人がこの感染症で命を失うことになる。糖尿病や呼吸器の持病を持つ人もまた、死亡率が高い。

 細菌やウイルスが目や鼻、口を介して気道や肺に入ると、それを排除しようと生体反応として炎症が起こる。すると、肺の働きが落ちて呼吸が苦しくなる。また炎症で高熱が出て、全身の臓器機能にダメージが生じる。

 武漢にある病院の医師によると、主に重症の肺炎患者でみられる呼吸困難が、新型肺炎の患者で多く見られた、と報じられている。

 新型肺炎については現在、国内ではHIVやインフルエンザの、米国ではエボラ出血熱の治療薬を使った臨床試験が進められている。世界初の新型コロナに対するワクチンの臨床試験も米国で始まった。

 呼吸器感染症に詳しい池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師はこう述べる。

「新型コロナに効く特効薬は今のところありませんが、いくつかの薬が治療で使われています。そのほか酸素が足りなければ人工呼吸器を用いたり、細菌の二次感染のために抗菌薬(抗生物質)を使ったりしています」

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