39キロ過ぎで先頭に立った吉田祐也(中央)
39キロ過ぎで先頭に立った吉田祐也(中央)
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 2月2日に行われた「2020別府大分毎日マラソン」で、日本人トップ(総合3位)となったのは、青山学院大学4年の吉田祐也だった。初マラソンで2時間8分30秒の記録は、学生の歴代2位。現在、中央大学の駅伝監督を務める藤原正和さんが現役時代に記録したタイムに18秒及ばなかったが、遅咲きのランナーが大きな花を咲かせた。

「すごいな、よく頑張ってる」「いける、いける」「そうそうそうそう」

 レースの中継中、青学の原晋監督は、アナウンサーから「今の吉田選手に声をかけるとしたら」と言われ、箱根駅伝の伴走車から声をかけるように言葉を発した。

 吉田は原監督の助言に従い、給水も危なげなくクリア。取れなかった隣を走る選手にボトルを渡す余裕すら見せた。

 レース後半は、昨年準優勝の選手を含む外国人2選手とのデッドヒート。残り3キロでは、一瞬トップに躍り出た。原監督も思わず、「前に出ましたね~」と叫んだ。

 実力はありながら、4年になるまで箱根駅伝の10人のメンバーには入れず、「11番目の選手」と言われてきた。今年、初めて4区で出場すると区間新記録を出し、チームの優勝に大きく貢献した。

「価値ある区間新記録を出したと思っています」

 こう話すのは、関東学生陸上競技連盟の上田誠仁・駅伝対策委員長だ。

「いま、学生の長距離界のレベルが非常に高くなっています。今回の吉田選手の走りは、積極性もあり、粘りの求められる35キロ以降もしっかり対応できていました。学生ランナーがマラソンで結果を出すということは、『将来マラソンに取り組みたい』という他の選手たちのモチベーションを上げるきっかけになります。そういう意味でも素晴らしい走りだったと思います」

 箱根駅伝は、日本最初の五輪マラソン選手で、日本マラソンの父と呼ばれる金栗四三の発案で、マラソン選手育成を目的に始まった。区間トップの走りを見せた吉田選手が、翌月にフルマラソンの国際大会で好成績を残したのは、

「非常に喜ばしいこと」

 と上田さんは言う。

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「昭和時代なら世界記録に匹敵のタイム」