「誰も挑戦していないことにこだわり続けたい」

 振り返れば、スノボでも挑戦する姿勢を貫いてきた。例えば、単発でも世界で数人しかできない大技「ダブルコーク1440」(縦2回転、横4回転)を世界で初めて連続で成功させたのが、平野だった。

「答えのないところを、自分が切り開いていかないと」

 平昌五輪の半年前にあったニュージーランド遠征で、平野のそんなつぶやきを、スノボ・ハーフパイプ日本代表を率いる治部忠重コーチは聞いている。

 スケボーの初陣は、19年3月に神奈川県藤沢市であった日本オープンだった。3位。5月の日本選手権では初出場優勝を果たし、日本スケートボード協会の強化指定選手に。

「エア(空中技)はピカイチ。跳んで着地する技術は高い」

 とは、日本代表の早川大輔コーチ。スタートは上々に違いなかった。だが今、世界の舞台で結果が出せず、もがく平野がいる。それでも、語る口調は楽しそうだ。

「経験したことのない環境で、周りの人たちにもまれながら、やっぱりここで、また自分の成長を見つけていければなっていう気持ちが大きいです」

 スケボー挑戦を決めた時には、こんなことを言っていた。

「誰もいない道を行く。トップであり続けたいなら、そういう考え方をしていかないと。カッコ良いとか悪いっていうものへのこだわりは、自分はもう捨てたつもりなので。常識をひっくり返す最初の人間が一番大変だし、勇気も要る。失うものも大きい。それでも僕は、新しい物を作る側として唯一無二の物を作りたい」

 夏と冬の五輪に両方出場すれば、日本勢では史上5人目。残り時間は、あと7カ月ほど。

「やったらやった分だけ実力がつくわけでもなく、けがのリスクもある。どういうふうにやっていかなきゃいけないか。頭でも、体でもフルに動かしているような状況。一つずつ積み重ねていった結果が、みんなに応援してもらえるような形になれば。今できるベストを突き詰めたい」

 二刀流が成就するかどうかは、本人にも分からない。ただ、平野の背骨を「挑戦」の喜びが貫いている。

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号