破棄か否かで揉めた末に延長した日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)問題など日韓関係が“戦後最悪”といわれる。騒動の発端は昨年10月末、韓国の大法院(最高裁判所)が出した徴用工裁判の判決。対立の根源は歴史認識の相違だ。「日韓歴史共同研究」に参加した韓国の研究者に問題点を聞いた。
日本では、この歴史認識の相違は韓国の教育が原因とする声が強い。実際はどうなのだろう。第2期「日韓歴史共同研究」(2007~10年)に参加し、両国の教科書についての報告書を執筆した鄭在貞・光州科学技術院客員教授に日韓の歴史認識の問題点を聞いた。
鄭教授は、今の日韓関係を人でいえば“複合骨折の状態”と例えた。
「歴史問題に経済問題が割りこんで、さらには安保問題まで加勢して複合的にしてしまった。この直接的な原因は大きく二つ。ひとつは慰安婦合意(15年12月)で設立した『和解・癒やし財団』を解散したことへの日本の反発。もうひとつは徴用工問題に対する大法院の判決の処理を巡るものです。そうした問題への対応過程で日本は安保上の問題から韓国に輸出規制とホワイト国(輸出管理優遇国)除外という対抗措置をしました。これを受けて韓国も信頼が損なわれた日本とはGSOMIAは延長できないと破棄を通告。ギリギリまで揉めた末に維持することになりました。それぞれの国民のナショナリズムが結びつく問題で国の自尊心、国民の自負心まで結びついて、どちらかが譲歩して解決しづらくなっている」
この背景にはこれまで両国政府が歴史問題などに対してどのように対処してきたかについての「無知」があるという。
「両国が少なくともこれまでどんな措置をしてきて、どんな合意をしてきたのか、どんな努力をしてきたのかについて正確に把握し、理解し、評価を共有する必要がある。事態の本質をきちんと把握していないため、対応も間違ってしまう」
そもそも歴史認識の違いを語る時、日本では「韓国の教育」を問題視することも多い。韓国の教科書制度は日本と同じ検定制。複数の出版社の教科書の中で検定を通過したものを学校が選択するシステムだ。高校の歴史教科書(韓国史)をみると、いずれも近・現代史に教科書全体(350~400ページ)の3~4割ほどの分量が割かれている。日本との葛藤の元となっている徴用工、徴兵、挺身隊、慰安婦などについてはどれも別立てされ、詳しく記述されている。