

気になる人物の1週間に着目する「この人の1 週間」。今回は俳優・劇作家の渡辺えりさん。少女の頃からずっと、殺し合いのない世界を夢見ていた。「芝居が、世界平和の一助になればいい」と、そんな気持ちで日々物づくりに携わる渡辺さんの日常。執筆、稽古、芝居、劇作家協会の会長職など目まぐるしさの中に、いつもユーモアと優しさが見えてくる。
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60歳になったら、地元の山形に帰って、子供やシニアの人たちにお芝居を教える塾を開き、そのお金で暮らしていこうと思っていた。
「古家をローンで買ったんですが、実際に60歳になってみると、思いのほか、体は元気で気力も充実していた(笑)。それで、地元に帰る計画を10年先延ばしにしたんです」
現在64歳。その塾を具体的にどう運営していくかは、現在も思案中だ。
「雪の時なんかに外を移動したら凍死しちゃうから、夏だけにしようかな、とか。あ、でも地元の一人暮らしのおばあさんたちは、本当にみなさん元気。農業で鍛えているから、足腰はすごく丈夫で若いです。顔は日に当たるからシワだらけですけど、一緒に温泉に入ったりすると、首から下は筋肉質で肌も真っ白(笑)。おなかもぺったんこで、ものすごく若い! 考えてみると、農閑期である冬のほうが、塾の需要はあるのかしらね」
そうやって一気にまくしたてながら、「私なんか、スクワットをやろうと思っても三日坊主。机に向かってものを書いていることが多いので、おなかも出っ張ったきり全然引っ込まない(笑)」とユーモラスに話す。「休みはあまりないですね。去年、日本劇作家協会の会長になってからはとくに。戯曲賞の審査があったり、文化庁の方とお会いして、劇作家の現状を説明したり、やらなければならないことがすごく多い。協会が発足した26年前は、劇作家のギャラもすごく安くて、一部の成功している商業演劇以外、芝居を作れば作るほど、作り手や出演者の懐事情が苦しくなるような状態でした。それで、国から予算をいただくことで劇作家の生活を守ろう、と井上ひさしさんたちが立ち上がったんです。協会に入るのも、最初はあまり気が進まなかったんですが、劇作家って孤独なはずなのに、愚痴をこぼせる相手に出会えたり、別役実さんとお会いできたり。入ったら、いろんな刺激がありました」