ただ、この調査は茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の全国5地域の保健所の管内で実施した。いずれも地方都市で、東京や大阪のような大都市はカバーしていない。日本を代表する企業の多くは東京や大阪に本社があり、中央官庁もある。日本の主力企業では精鋭の社員の多くが東京などの大都市で働いている。国立循環器病研究センターの野口医師は、今回の調査について評価しつつ、「大都市の勤め人にあてはまるのか、一般化は慎重にしないといけない」とも。

 一方、野口医師はまじめすぎるようなタイプに心筋梗塞になる人が多いとも話している。

 急性心筋梗塞が怖いのは、発症を事前に予測することは難しいとされ、突然死につながることも多いからだ。発症時の症状は動悸や息切れ、胸に激痛の発作などで、呼吸困難や冷や汗、激しい脈の乱れが生じることもある。発症時間は早朝、夏よりも冬場が多い。気になる症状が出たら、医療機関をすぐに受診したほうがいい。

 例えば、60代の男性は、脂汗が出て、階段の昇降で息切れするようになっていた。その後、普段の歩行で体が大きく揺れているような感じが続いた。そこで病院を訪ねると、急性心筋梗塞と診断された。冠動脈の詰まりかけた部分をステント(金属製網状チューブ)で広げるカテーテル治療を受け、無事退院できた。

 別の60代の男性は、歩くとすぐ、気管支が熱っぽいと感じるようになった。その後、洗面時にも同じように感じるようになった。あるとき、外出してしばらく歩くと胸に痛みと苦しさがあり、立っていられなくなった。そのまま地面に伏してしばらくすると落ち着いてきたので、何とか家に戻り、すぐに病院へ行くと急性心筋梗塞と診断された。ステントを使ったカテーテル治療を受けて、無事家に帰ることができた。

 発症した場合、最初の処置が大切だが、予防のためにできることもある。現役時代に長時間労働で仕事に励んでいたとしても、過去には戻れない。今から、禁煙を心がけ、血圧や血糖値などを管理していくことが大事だ。運動不足やストレスも要注意。さらに、低脂肪で糖質を控えるほか、高血圧を避けるような減塩、食物繊維をとることも心がけよう。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年6月7日号