日々の歯磨きも、年齢に応じた方法を。高齢になると手先を自由に動かしにくくなる。磨き残しが出やすいため、虫歯や歯周病になりやすい。その場合、電動歯ブラシなどを利用してもいいそうだ。舌の表面が白く汚れていたら、舌の機能が低下し、しっかり使えていない証拠。先の舌裏伸ばしトレーニングをするとともに、歯ブラシや専用の器具で舌を掃除しよう。
降圧薬や睡眠薬などを服用している人は、こちらにも注意を払おう。「こうした薬の副作用でオーラルフレイルになっている可能性もある」と、斎藤さんは注意を促す。
「薬のなかには、筋肉の緊張をゆるめる成分が入っているものもある。使い続けると筋肉がゆるみっぱなしになり、かむ力が弱まってきます。のみ込むときに使う筋肉もゆるむので、誤嚥もしやすくなる。唾液分泌を抑えるものもあります。気になる方は一度、かかりつけの医師などに相談してみるといいと思います」
実は今、歯科でオーラルフレイルの検査を受けたり、オーラルフレイルを予防するための方法を教えてもらったりすることができる。しかも健康保険が使える。
昨年4月からの制度で始まって間もないため、どの歯科でもできるわけではないが、気になったら、かかりつけの歯科医などに相談してみるといいだろう。
かむことで脳への血流が促され、認知症予防にもつながるという報告もある。菊谷さんは言う。
「口周りや舌の筋肉は、太ももやおなかの筋肉と違って、若いころにトレーニングをして鍛えておく“貯筋”ができない。見方を変えれば、気づいたときにトレーニングを始めることで、筋力を低下させないようにすることができる。年だからとあきらめないで、チャレンジしてほしい」
(本誌・山内リカ)
■オーラルフレイルのサイン
・食べものがのみ込みづらい
・食べこぼす
・食べるとむせる
・食べものをかみにくい
・軟らかいものを食べるようになった
・滑舌が悪くなった
・歌をうたいにくくなった
・口が渇きやすい
・口臭が気になる、人から指摘された
鶴見大学歯学部・斎藤教授への取材から
※週刊朝日 2019年5月3日号‐10日合併号