ソフトバンクの柳田悠岐(C)朝日新聞社
ソフトバンクの柳田悠岐(C)朝日新聞社
2009年3月のWBCで優勝し、喜び合う日本の選手たち(C)朝日新聞社
2009年3月のWBCで優勝し、喜び合う日本の選手たち(C)朝日新聞社

 中学生を指導するコーチに話を聞くと、子供たちの打撃にある変化が起きているという。

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「昔みたいに打球を叩きつけるという意識が薄くなりましたね。今はウエートトレーニングで体を大きくして、アッパースイングで本塁打を狙う子供が多い。メジャーリーグや日本のプロ野球で流行しているフライボール革命の影響が大きいと思います」

「フライボール革命」は、ゴロより飛球の方が長打になる確率が高いという見地から、アッパースイングで打球に角度をつけて打ち上げることを推奨する打撃理論。メジャーリーグで本塁打数が激増し、日本でもソフトバンクの柳田悠岐が実践して一躍有名になった。
 
 球場が狭くなったことも、本塁打偏重の打撃に拍車をかけている。ソフトバンクは2015年から、ヤフオクドームに「ホームランテラス」と呼ばれるラッキーゾーンを設置した。

 ロッテも今季から、ZOZOマリンスタジアムに外野席がグラウンドにせり出したホームランラグーンを設置。その効果は早くも出ている。昨年はチーム本塁打がリーグ最少の78本だったが、今年は本拠で開催された開幕3連戦で計6本塁打。日本ハムから加入した主砲のブランドン・レアードは、開幕から4試合連続弾を放つなどリーグトップの7本塁打を量産している。

 本塁打が飛び交う派手な試合が増えた一方、「1番から8番までみな同じように大振りで野球が淡白になった。1イニングでの大量得点は増えたが、1点を取る野球が下手になった印象がある」と指摘する声も。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や五輪など、対戦経験の少ない投手を相手に得点を取るのが難しい世界大会では、進塁打、犠打など小技を駆使して1点を奪う日本の緻密な野球が大きな武器だった。

 フライボール革命で本塁打を打てる打者が増えることは大きなプラスアルファだが、日本野球の伝統だった緻密さ、機動力が軽視されることが懸念される。

 1番から8番までホームランバッターをそろえた打線が、投手にとって最も脅威になるとは言い切れない。
 

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「いやらしい打者」の存在は重宝されるべき