焦った早川さんは妻の実家を訪ねるが、玄関先で妻の母親から「娘は外出している」と門前払いをされた。そして出産半年後に、妻から手紙が届く。内容は離婚の催促。まさに青天のへきれきだった。

「離婚の理由は『子供に関心がない』とか『あなたのお母さんから、デキ婚と嫌みを言われた』など、取るに足らないものです。妻の気持ちを測りかねているうちに、妻の代理人を名乗る弁護士から連絡があって、離婚に速やかに対応するか、それとも連絡を絶つか、どちらかを選択するように求められたんです」

 妻子への未練が断ち切れない早川さんは弁護士を立てて調停を起こし、離婚不成立を勝ち取る。だが、同居していないため、裁判を起こすと不利になる。「妻の気が変わるのを待ちます」。早川さんはマンションで一人暮らしている。

 離婚カウンセラーとして延べ3万7千人の相談を受け、夫婦問題のアドバイザーも担う「離婚110番」の澁川良幸氏は「妻と一度も同居せず、離婚しない男性が、数年前から増えている」といい、解決方法を次のように述べる。

「早川さんの妻は、母親への“依存体質”と言えます。実年齢よりも精神年齢が幼い女性でしょう。母親はおそらく世間体を気にして結婚を許したと思われます。早川さんが『おかしい』と疑惑を感じた時にネットで検索してみるべきでした。依存体質の特徴を知ることができますからね」

 それでも婚姻関係を続けたいのなら、妻の実家にアプローチする努力をすべき、と提案する。

「結婚は当人同士の問題と言いますが、とんでもない間違いです。結婚で失敗する人のほとんどが当人しか見ていないといえるでしょう。相手の人間性を形成した環境を観察すれば、対処方法もわかってきます。妻が依存体質なら、実家に戻る時に『ゆっくりしていいよ。でも寂しいから早めに帰ってきてね』と実家に依存する妻を受け入れながら、妻に対する愛情もアピールすべきでした」

 高度成長時代の男と女の役割分担がすっかり変容した。男が家族のあり方を見直す時期が来ている。

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