患者ごとに、どのタイプの薬剤が合っているのかがわかる検査法はなく、「一般的によく効く」薬剤を順番に使い、眼圧検査などで効き目を確認しながら治療を進める。

 治療効果について相原医師の見方はこうだ。

「眼圧を現状から3割下げることができれば、かなりの患者さんの視野障害の進行を抑制できるとみられています。生涯、視野を維持するという目標からすれば、治療開始時の視神経の傷つき方が同程度でも、80代の患者さんならそれほど薬を使わなくてよくても、40代の患者さんには最大限の投与が必要になる場合が出てきます」

■治療継続率は3カ月ほどで急落

 開放隅角緑内障の患者が治療を続けられる割合は、開始から3カ月ほどで急落し、1年後にはPG関連薬で約7割、β遮断薬などでは半分ほどになり、その後さらに低下するというデータが出ている。

 中野医師はPG関連薬だけで治療を始めた患者の1年後の治療実態を調べた。その結果、そのままPG関連薬だけで治療を継続していたのは約半数にとどまり、PG関連薬にほかの薬剤を加えた患者が7%、副作用などでほかの薬剤に変更した患者が4%、そして33%は受診を確認できず治療中断が疑われた。

 治療を中断すれば、視神経の障害(視野欠損)が進む。いったん障害を受けた視神経は修復できず、失明を含む視覚障害のリスクが高まる。

 これを回避する一案として、中野医師は点眼時間を知らせるアラームが鳴るアプリを開発した。

「緑内障の点眼薬治療は一生続けるもの。有効な点眼薬がそろっており、歯みがきと同じように習慣として毎日続けられるかどうかが課題です。中断すれば将来どうなるかをよく理解して治療を継続してほしい」

◯東京大学病院眼科教授
相原一医師

◯東京慈恵会医科大学病院眼科主任教授
中野 匡医師

(文/近藤昭彦)

※週刊朝日2月22日号から