※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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東京大学病院眼科教授 相原一医師(本人提供)
東京大学病院眼科教授 相原一医師(本人提供)
東京慈恵会医科大学病院眼科主任教授 中野 匡医師(本人提供)
東京慈恵会医科大学病院眼科主任教授 中野 匡医師(本人提供)

 緑内障は日本人の失明を含む視覚障害の原因の4分の1以上を占め、患者は40歳以上の20人に1人と推計されている。約8割は開放隅角緑内障であり、多くは眼圧が正常なタイプだ。治療は薬物療法が中心となる。

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 緑内障は眼球の内側から外側に向かってかかる圧力「眼圧」によって視神経が萎縮することで、視野が徐々に欠けていく病気だ。東京大学病院眼科教授の相原一医師は言う。

「緑内障は眼圧が高い病気のイメージがあるかもしれません。しかし、眼圧のコントロールは治療の際には重要ですが、診断では視神経と視野の状態がポイントになります。眼圧が高くても緑内障ではない場合もあれば、正常な眼圧(10~20ミリメートルHg)でも緑内障の場合もあります」

 眼圧検査や視野検査、網膜の血管や神経の状態、出血の有無を見る眼底検査などから、緑内障の診断がついたら、隅角検査で隅角が開いているのか、閉じているのかを調べる。隅角は角膜と虹彩の間にあり、房水の排出口となっている。

 隅角が開いていれば開放隅角緑内障、閉じていれば閉塞隅角緑内障となる。

 眼の毛様体でつくられる房水の分泌量と、隅角からの排出量のバランスがとれていることで眼圧は一定に保たれる。

 隅角が閉じていれば、房水の排出が妨げられ眼圧が上がり視神経を傷つける。しかし、隅角が開いて眼圧が高くはないのに視神経が傷つくこともある。東京慈恵会医科大学病院眼科主任教授の中野匡医師が解説する。

「眼圧が高くても視神経は正常という人がいる一方で、眼圧が正常の範囲内でも視神経が傷ついてしまう人がいるため、眼圧の影響のみで視神経が傷つくしくみは説明できません。まだわからないことが多い病気といえます。日本人の場合、このような正常眼圧緑内障が開放隅角緑内障の約9割を占めているのが特徴です」

■視野を維持して寿命を迎える治療

 緑内障の多くは自覚症状がないために、発症していても、大半の人が治療どころか、気づいてもいないのが現状だ。

 緑内障の治療の目標は、視神経が傷つき、失明を含む視野障害に進むことを食い止めることであり、開放隅角緑内障の場合は、薬物療法で眼圧を下げることが中心になる。

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合併症のリスクが低い点眼薬治療