「眼圧が高ければもちろん、たとえ正常の範囲であっても、より下げることで視野障害の進行を抑えられることが明らかになっています」(相原医師)

 緑内障の治療で唯一、科学的根拠があるのは「眼圧を下げること」なのである。

「正常眼圧を含め、緑内障を発症すると、たとえ治療をしても、ゆっくりですが視野障害が進んでしまいます。これに対して、薬物療法などで、失明までの期間をいかに先延ばしにして、視野を維持して寿命を迎えられるかを考えていきます」

 相原医師はこのように述べ、眼圧をいつまでに、どれくらい下げ、維持していくか、そのためにどのような薬剤を使うかといった治療計画を立てることが重要だと指摘する。

 治療計画のためには、治療開始から数年かけて眼圧推移のデータを収集することになる。

 治療は主に点眼薬が使用されるが、その背景を中野医師が説明する。

「レーザー治療や手術もありますが、より合併症のリスクが低い点眼薬での治療が中心になります」

 緑内障に対する点眼薬には、房水の排出を促すプロスタグランジン(PG)関連薬、ROCK阻害薬、房水の産生を抑えるβ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、両方の作用をもつα2刺激薬などがある。これらのうちの2種類を組み合わせた配合剤もある。

 さらに2018年11月には、房水の排出を促すタイプに、EP2受容体作用薬という新たな効き方をする薬剤が発売になり、薬の選択肢が広がっている。

 開放隅角緑内障の治療には、最初にPG関連薬、もしくはβ遮断薬を使うことが一般的になっており、薬剤の効き方や副作用を確認したうえで、ほかの薬剤に変更したり、追加したりしていく。

「通常、点眼薬は複数を使うことになりますが、診療ガイドラインにより3剤までとされています。ただし、配合剤を使えば、3剤でも4種類の効き方をする薬を使えることになります。初期なら1剤で間に合う場合もありますが、末期では3剤をフルに使うことになります」(相原医師)

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失明などの視覚障害リスクも?