また、大手IT企業の従業員に同様のヨーグルト飲料を4週間摂(と)ってもらった研究でも、摂取時のほうが体調はよく、その結果、労働パフォーマンスが向上したという。

「プラズマ乳酸菌を摂取することで、体の中からバリアー機能が高まります。続けることで、体をさまざまなリスクから守ってくれます」(藤原さん)

 同じく、感染などから体を守る働きが期待されているのが、シールド乳酸菌だ。小腸にいるNK細胞などの免疫細胞を活性化させて、インフルエンザや風邪などの症状を軽減させる働きが期待されている。

 インフルエンザの予防接種を受けた85歳以上の高齢者にシールド乳酸菌を摂ってもらった研究では、ワクチンの接種効果が高まったことが報告されている。

「シールド乳酸菌は免疫力を高める働きに注目して選び抜かれた“ヒト由来の乳酸菌”です。一般的にヒト由来の乳酸菌は、生きて届くことでさまざまな効果を発揮するとして注目されていますが、シールド乳酸菌の場合は、加熱して菌を殺した状態でも免疫力を高める効果が期待できます」(森永乳業広報IR部)

 乳酸菌の基本的な働きといえる腸内環境を整えるという点で注目したいのが、植物由来の乳酸菌だ。

 乳酸菌には大きく、動物由来のものと植物由来のものとがある。後者の代表的な乳酸菌の一つが、ブレビスT001。京都の漬物から発見された菌だ。

 ブレビスT001の特徴は、生きたまま腸に届くというところ。生きている乳酸菌は、腸内の糖や食物繊維をエサにして、乳酸をつくり出す。それにより腸内が弱酸性に傾いて、腐敗によって有害な物質をつくり出す悪玉菌がすめないようにしている。

 研究では、便秘傾向のある健康な成人に乳酸菌ブレビスT001を含むチョコレートを2週間摂ってもらった。すると、便のなかの乳酸菌が有意に増えた一方で、腐敗産物の一つインドールが減少した。別の試験では、乳酸菌ブレビスT001入りのチョコレートを摂取した群が、普通のチョコレートを摂取した群と比べ、排便回数や排便日数が増加した。

「植物由来の乳酸菌は動物由来と比較して、過酷な環境でも生育できるものが多い。何らかの環境適応能力を持っていると思われます。今後、ヒトにとって有益な物質をつくる乳酸菌が見つかる可能性も十分にあります」(ブレビスT001を扱う日東薬品工業)

 今回紹介した研究や乳酸菌の働きは、ごく一部。前出の後藤さんの著書によると、このほかにも健康効果が期待されている乳酸菌はたくさんある。腸内環境を整えて便通改善に役立つというものだけでなく、免疫力の向上や、血糖値や血圧、血中コレステロールの上昇抑制、アレルギー症状の抑制や緩和など、多岐にわたる。

 後藤さんは言う。

「善玉菌がすむ腸内フローラは、生後、母親から受け継がれますが、加齢とともに減り続けていき、50代になると100分の1ぐらいになる。代わって悪玉菌が台頭するようになるので、それを阻止するためにも、乳酸菌を積極的に摂取しましょう」

 摂り方のポイントは三つ。一つめは「少しずつでも毎日」。食事で摂取した乳酸菌は、腸内にとどまっているわけではなく、便として排出される。そのため、摂取し続けることが大事だ。目安は80~100グラム。習慣化するには「朝食後」というように、食べるタイミングを決めておくとよい。

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