週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から
週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から

 がんは2人に1人かかるといわれ、がんと告知される場面ではさまざまな困惑に遭遇します。週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」では、Q&A形式で「告知されて困った」に関する悩み・疑問に専門家が回答しています。ここでは、「職場にどう伝えたらいい?」「子どもにがんを伝えて不安にさせたくない」など5問について、保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆医師と都立駒込病院がん化学療法看護認定看護師の春藤紫乃看護師に回答してもらった内容を紹介します。

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Q 職場にどう伝えたらいい?

A 治療のスケジュールや仕事への影響を具体的に伝えましょう

「仕事と治療の両立はできそうもない」「休むと職場に迷惑をかける」といった理由で、告知された直後に辞表を提出するのは避けましょう。時間がたち冷静になったとき後悔するからです。遠慮せず会社の制度を使うことを考えましょう。

 まずは、業務外の私傷病に関する会社の就業規則を調べ、医師に診断書を発行してもらいます。会社に「傷病休暇制度」などがあれば、長期間休む必要がある場合に利用できます。信頼できる上司や同僚には、具体的な治療のスケジュールや、仕事にどのような影響が出る可能性があるのかを、あらかじめ伝えておきましょう。そうすることで、職場の理解や協力を得ることができます。

 職場の人には知られたくないというケースもあります。

「伝えないことも一つの選択だと思います。ただ、休みがちになったり、外見に変化が現れたりして、上司や同僚から指摘される可能性は高いと考えたほうがいいでしょう。職場に伝えない場合はそうしたときにどう答えるか、自分なりに決めておくことをおすすめします」(都立駒込病院・春藤紫乃看護師)

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Q 子どもにがんを伝えて不安にさせたくない

A 隠し通すほうが子どもを不安にさせます

 病気のことを隠し通すのは無理だと思ったほうがいいでしょう。たとえ小さな子どもでも、周囲の雰囲気から、何かが起こっていることを察するものです。隠すことはかえって子どもを不安にさせ「疎外されている」「信頼されていない」と感じ、傷つきます。

 小学校低学年くらいまでなら、がんという言葉は使わなくても「悪いものをとるために病院に行ってくるね」といった言い方で伝えるといいでしょう。薬物療法の副作用で見た目に変化が出る場合などは、あらかじめ伝えておいたほうがショックを和らげることができます。

 高学年くらいであれば、治療期間中などに子どもの協力が必要なことがあります。より詳細に病気のことを説明したほうが、納得してサポートしてくれるでしょう。

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