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Q がんが完全に治ることはあるの?

A 特別な病気ではない。慢性疾患の一つと捉えましょう

 がんというと「治らない病気」という印象を持つ人が多いかもしれません。確かにがんは日本人の死因で最も多く、10人に3人はがんで死亡します。

 しかし胃がんや大腸がん乳がんなど、早期に治療できればほとんど治るがんもあります。がんは2、3年以内に再発しやすいことから、治療後5年たって再発がなければ、定期的な検査もしなくなることが多いようです。

 ただし、乳がんのように5年以上たってから再発するがんもあり、長く経過をみていく必要があります。

「実は完全に治る病気というのは、そう多くはありません。高血圧も糖尿病もうつ病も治ったと言い切るのは難しい慢性疾患です。がんも特別な病気ではなく、こうした慢性疾患と同じだと考えるのが正しい捉え方だといえます」(保坂サイコオンコロジー・クリニック・保坂隆医師)

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Q 告知されてから「死」が頭から離れず眠れない

A 不眠が2週間以上続いたら専門医を受診して

 人は大きなストレスを受けると「衝撃の段階」→「不安定段階」→「適応段階」と時間の経過とともに心理状態が変化します。衝撃を受けたのち、1~2週間は泣く、わめくなど不安定になります。2週間以上たつと真正面から治療に向き合う適応的な行動がみられるようになります。しかし2週間以上たっても眠れない、食欲がないなど、適応の段階に進まない人が約3割程度います。この場合、適応障害の可能性が高いので、精神科医など専門医を受診しましょう。

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Q 自分のがんが完全に治るのか、医師に聞いてもはっきりしない

A 医師は「治る」とは言い切れないものです

 医師が「完全に治る」という言い方をすることはないと思ったほうがいいでしょう。治療効果があった場合、医師は「画像上がんはなくなりましたね」「今使っている抗がん剤は効いているようですね」というような言い方をするはずです。検査結果ではがんがなくなっていても、がん細胞がどこにも存在しないとは言い切れないのです。また5年相対生存率などのデータ上では9割を超えているような早期の場合でも、個人個人のことは予測しきれないのです。

【監修】
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
保坂 隆医師

都立駒込病院がん化学療法看護認定看護師
春藤紫乃看護師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から