歩くことは、お金をかけずにすぐできる健康法である。でもいったい、1日にどれくらい歩けばいいのだろうか。そこで年代別の目標歩数を導き出した。歩数を見てひるんではいけない。家事をするだけで3千歩にもなるという。
健康増進を目的とした運動のなかでもウォーキングは、運動習慣のない人や体力に不安のある人でも手軽に始められるとあって、ここ数年、中高年を中心に人気となっている。
世界的に見て、日本は長寿国である。だが、介護などの必要がなく、日常生活を支障なく過ごせる期間を示す「健康寿命」をみると、男性が72.14歳、女性が74.79歳(厚生労働省、2016年の推計値)で、平均寿命とは男性で8.84年、女性は12.35年の差がある。つまり、約10年もの間、何らかの介護支援が必要となるのだ。
一般的に筋力や体力(身体活動量)は20歳代がピークで、30歳以降は10年で5~10%ずつ低下していく。20歳代を基準として体力が30%以下に落ちると、自立した生活ができなくなり、要介護や寝たきり状態になる。つまり、ここが「寝たきり危険(要介護)ライン」。信州大学大学院特任教授の能勢博医師は「日常的に運動をしている人としない人では、この30%ラインを超える年齢に15~20年もの開きがある」と話す。
健康寿命を延ばす方法の一つであるウォーキングだが、実際、歩くことと健康寿命の関係を示した研究結果が報告され、エビデンス(科学的根拠)も蓄積されてきた。
人それぞれ、筋力も違えば体力も違う。それを踏まえて、健康寿命を保つための年代ごとの1日の目標歩数の目安を算出した。結果、サラリーマン世代(40~59歳)は8千~1万歩、定年後(60~64歳)は8千歩、前期高齢者(65~74歳)7千歩、後期高齢者(75歳以上)は5千歩となった。
「あえて歩く時間を捻出しなくても、毎日の生活の中でちょっと工夫をするだけで、かなり歩けています」と話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所副所長の新開省二医師だ。