一方、マッサージは指圧とは少し違っています。足裏マッサージなどは経穴を刺激するので、指圧の部類に入るのでしょうが、いわゆるマッサージは皮膚と筋肉に対する刺激が中心です。

 この皮膚の働きは注目に値します。皮膚は粘膜とともに、私たちの生命を外敵から守る水際です。そこでは四六時中、外敵と戦いが繰り広げられています。このため免疫の働きの中で重要な役割を担う樹状細胞が皮膚と粘膜には数多く分布しています。

 ここからは私の想像ですが、マッサージによって樹状細胞が生き生きしてきて、免疫力が高まるということが、考えられるのではないでしょうか。

 さらに皮膚は第二の脳だという説もあります。

『皮膚は「心」を持っていた!』(青春新書インテリジェンス)の著書がある身体心理学が専門の山口創さんによると、受精卵が細胞分裂をして人の形になっていくときに、まずは三つの層が生まれるそうです。そしてその三層のひとつ、内胚葉からは内臓が、また中胚葉からは骨や筋肉が生まれるのですが、外胚葉は皮膚と脳に分かれていくというのです。つまり、皮膚と脳はもともと近い存在なのです。

 なので、マッサージによる皮膚への刺激は脳に対しても、いい効果をもたらす可能性があるのです。これも認知症予防が期待できるのではないでしょうか。

週刊朝日  2018年10月12日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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