認知症予防のサプリメントとしては、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、フラボノイド、葉酸など抗酸化物の有効性を検討した研究が数多くあります。でも、一定の評価には至っていないようです。

 がん治療においては、免疫賦活作用のあるサプリメントがいくつかあって、私のクリニックでも、抗がん剤による免疫力低下を補うという意味で、患者さんに出しています。

 認知症にもそういうサプリメントが現れないかと期待していたのですが、最近、実用化に向けて注目され始めたものがあります。代表的なポリフェノールであるリグニンの構成成分のフェルラ酸(ferulic acid)のサプリメントです。

 フェルラ酸は食品としては、玄米、米糠、全粒粉などに含まれています。生理作用として、抗酸化、抗腫瘍、血糖上昇抑制などが報告されていて、さらにアルツハイマー型認知症の改善効果も明らかになりつつあるというのです。

 以前に書きましたが(8月3日号)、アルツハイマー型認知症の引き金になると見られているのがアミロイドβの沈着です。フェルラ酸は動物実験でこの沈着を阻害し、さらに神経前駆細胞の増殖を誘導したというのです。

 ところが難しいのは、フェルラ酸は腸管からの吸収効率が悪いのです。そういう問題点を克服したサプリメントが生まれたら、私も飲もうと思っています。

週刊朝日  2018年9月21日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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