撮影/鎌田倫子
撮影/鎌田倫子
身体の部位と痛みの関係(イラスト/竹口睦郁)(週刊朝日2018年9月21日号より)
身体の部位と痛みの関係(イラスト/竹口睦郁)(週刊朝日2018年9月21日号より)

「痛い!」は身体のSOS。病気やケガに気づくきっかけになるが、痛む場所に原因があるとは限らない。思いも寄らない部位が痛いということも多々あるのだ。診断が遅れれば、それだけ治療は難しくなる。これだけは知っておきたい、重病が潜んでいる痛みについてまとめた。

【図解】肩、ふくらはぎ等…身体の部位別・潜んでいる重病はこちら

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 九州在住の男性Aさん(50代)は、肩こりを感じて週に何度かマッサージ店に通っていた。しかし、一向に改善されない。整形外科を受診しようとした矢先、強い胸の痛みと息苦しさに襲われ、救急車で搬送された。医師の診断は、「急性心筋梗塞」だった。

「Aさんは幸い、適切な治療を受けたため、命に関わるようなことはありませんでしたが、そのとき医師から聞いて初めて“肩こりが心筋梗塞の症状”であることを知ったわけです」

 こう話すのは、Aさんの治療を担当した小倉記念病院(北九州市小倉北区)循環器内科主任部長の安藤献児さんだ。

“痛み”は身体が発するSOS。だが、必ずしも病気になった臓器の周辺が痛むとは限らない。心臓の病気で肩に症状が出たAさんのように、思いも寄らない場所が痛むことがあるのだ。

「こうした痛みのことを、『関連痛』とか、『放散痛』と言います」

 と説明するのは、総合診療医で、アメリカの家庭医療の専門医資格も持つ生坂政臣さん(千葉大学医学部附属病院総合診療科科長)だ。

 一般的には関連痛は“病気になった臓器の周辺ではなく、別の場所だけに生じる痛み”、放散痛は“病気になった臓器の周辺と、別の場所の両方で生じる痛み”と区別される。

「とくに問題になるのは、関連痛。内臓由来のものと骨や筋肉由来のものがあり、絶対に見逃してはいけないのが前者です」(生坂さん)

 ただ、こうした痛みから正しい病気を診断するのは、その分野に精通した医師でないと難しい。

「例えば、“肩が痛いから整形外科に行った”など、患者さんの自己判断で病気とはまったく関係のない診療科を選んでしまうと、誤診につながる恐れがあります。実際、それで医療過誤となった事例も珍しくありません」(同)

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