虫垂炎はご存じのとおり、腸の右側にある虫垂(盲腸)に炎症が起こる病気。何らかのきっかけで炎症が起こり、虫垂に穴が開いたり破裂したりすると、そこから内容物の便などがおなかの中に散らばり、腹膜炎をもたらす。そうなると緊急手術が必要になる。

 橋口さんによると、虫垂炎の痛みは臓器がある右側の下腹部痛ではなく、「むしろ、みぞおちの痛みやむかつき、吐き気などから始まるケースが多い」。半日から1、2日経ってから、右側の下腹部が痛み出すという。

「それだけに初期診断が非常に難しい病気です。胃の調子が悪くて胃に問題がない場合、その後も注意深く様子を見て、痛みが右腹部に移動してきたら、すぐに医療機関に行ってください」(橋口さん)

 女性であれば、「PID(骨盤内炎症性疾患)」という病気の可能性も。産婦人科医の牧田さんはこう説明する。

「PIDは、クラミジア感染など、パートナーとの性交渉によって起こる子宮、卵管、卵巣周囲の感染症の総称です。急激に起こる痛みと発熱(ときに高熱)が特徴で、感染が進むと卵巣や卵管に膿がたまります。痛みは下腹部痛、性交痛が主ですが、肝臓にまで感染が広がる『肝周囲炎』を発症すると、右の季肋(きろく)部(肋骨の下あたり)が痛くなります」

 もちろん、みぞおちが痛む病気は、急性胃炎、慢性胃炎、アニサキス症(寄生虫のアニサキスを食事で摂取したことで起こる食中毒の一つ)、胃潰瘍などさまざまだ。こうした病気ではないことを、検査できちんと確認してもらうことは大事だろう。

(5)「腰が……。ぎっくり腰? ヘルニア?」→「大動脈解離」で救急搬送!? 「膵炎」「尿路結石」の可能性も

 キケン度が高いのは、腰が悪いと思っていたら、実は「大動脈解離」が起こっていたというケース。千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)副院長の鶴田好彦さんは、「腰痛で絶対に見逃してはいけない病気」と語る。

 大動脈解離とは、心臓から全身に血液を送り出す通り道で、全身で最も太い血管である大動脈の内側の膜が剥がれて、血液が流れ込んだ状態。喫煙者や血圧の高い高齢者に多い病気で、大動脈破裂などが起これば、一刻を争う。鶴田さんは言う。

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