「大動脈解離は突然、痛みが起こるため、多くは救急車で運ばれますが、高齢者では痛みの感じ方が鈍くなっていることがあるため、ガマンしてしまう。あるいは重い荷物を持ったときにたまたま発症したことから、ぎっくり腰だと思って整形外科を受診して、手遅れになってしまうこともあるようです」

 注意する目安として、生坂さんは「腰よりも上の痛み、背部痛があるときは気をつけて」と話す。

「腰は、悪い姿勢などで最も負担がかかる部分。椎間板ヘルニアなど整形外科的な病気は脊椎の下側、つまり腰に現れやすい。一方、脊椎のなかでも負担が軽いのが背部。そこが痛くなるような場合は、やはり大動脈などの病気を疑ったほうがいいと思います」(生坂さん)

 ほかにも、腰や背中の痛みは、「逆流性食道炎」や「胸膜炎」などの食道や肺の病気、「膵炎」「尿路結石」などの膵臓や泌尿器などの病気が隠れていることもある。急に痛み出した場合は注意しよう。

(6)「おなかが痛いくらいは、ガマンしよう」→「腸閉塞」で緊急手術!?

 多かれ少なかれ誰でも経験したことがある、下腹部の痛み。横になっていればよくなるケースもあるが、キケンな痛みのこともある。

橋口さんは、「腹部の手術を受けたことがある人で、急な痛みがあったら腸閉塞を疑ってほしい」と話す。おなかを大きく開けた開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術や帝王切開でも腸閉塞は起こることがあるそうだ。

「手術後の腸閉塞というと、手術後1年以内で発症することが多いのですが、以前私たちが実施した調査では、手術から2、3年経過してからも起こることがあり、7年後に発症した事例もありました」(橋口さん)

 腸閉塞は腸の通りが悪くなる病気で、手術後の癒着(臓器同士がくっつくこと)が原因であることが多い。便を通そうと腸は無理やりに蠕動運動を起こそうとするため痛みが出る。波のある強い腹痛が特徴だ。おならが出にくい、おなかが張る、吐き気などが出ることもある。

「腸がねじれると壊死してしまう。そうなると緊急手術をすることになります。病気の重さと痛みの強さはだいたい比例します。はじめはガマンできていた痛みが、ガマンできなくなってきたら、受診のタイミングだと思ってください」(同)

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