パワハラ問題が明るみに出ることにより、その業界での膿が出る場合もある。どの世界にもアンタッチャブルな部分があって、それはあまりにも時代錯誤と思われるものも。誰しもが触れることのできなかった「膿」を出せる環境になった。業界全体が「膿」と思う場合は、その告発が大多数の正義となるのだが、今の時代、数人が不快と感じたことを「パワハラ」として告発できてしまう。そして、数人の感覚をその業界全体に見せてしまうこともできる。それが怖いから、若い世代に対して必要以上に敏感になりすぎてしまう。どこからがパワハラになるのか?というのも、企業にとって大きな問題になっていくのだろう。たとえば、出世レースってどうなのか? A派とB派が社内で争っていて、結果、社長がA派を選ぶ。A派はB派をラインからはずしていく。わかりやすく「トバす」ことをする。周りから見たってそれは超わかりやすい。これです。これをね、50代の人はね、これが会社での戦いだと理解するし、それが「当たり前」だけど、これが20代の人だと、これを「パワハラ」と呼ぶ人もいるのかもしれない。「社内の人事という権力により、地方の支社にとばされました」と言いだす人もいるかもしれない。

 パワーの逆が「バランス」なんじゃないかと思っているのだが、このままパワーを排除して「バランス」を取っていくと、結果、それがバランスを崩していくんじゃないかと勝手に思っている。

週刊朝日  2018年9月21日号

著者プロフィールを見る
鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

鈴木おさむの記事一覧はこちら