【誤解】 補聴器は眼鏡店などで買えばいい


【正解】 まずは耳鼻科へ行きましょう

 補聴器は、法制度により定められている医療機器及び補装具で、難聴のレベルにより形や機能もさまざまな種類があります。医療機器ですので、自分に最適な補聴器を選ぶには慎重に選ぶ必要があり、自分自身や家族の判断で補聴器が必要か、効果があるかを正しく決めることはできません。

 補聴器の購入前には日本耳鼻咽喉科学会認定「補聴器相談医」による診断と聴力検査を必ず受けましょう。医師による診断後、補聴器の装用が必要な加齢性難聴と診断されたら、そこで初めて補聴器の装着を検討します。聴力検査の結果とその生活環境によって総合的に判断すべきですが、40デシベル以上の中等度難聴で日常的に聞き返しなどが多く、家族や友人とのコミュニケーションに不便を感じる場合は補聴器を検討してもいいでしょう。

 補聴器の購入においては、補聴器相談医が紹介する「認定補聴器技能者」がいる販売店であれば問題ありません。医師の診断を受けずに直接、眼鏡店などで安易に購入することはトラブルのもとになりますので避けましょう。

【誤解】 補聴器をつければすぐに聞こえがよくなる
【正解】 脳が補聴器に慣れるのに3~6カ月かかります

 視力が落ちたときに眼鏡をかければ、その場でよく見えるようになりますが、補聴器は購入してすぐに快適に聞こえるというものではありません。脳の聴覚中枢が補聴器に慣れるのにおおむね3~6カ月かかるといわれており、聞こえの状態によって期間は変わってきます。

 すぐに聞こえがよくならないのは、補聴器のせいではなく、脳が対応できていないためなのです。補聴器外来では、補聴器購入前にまず、語音聴力検査、不快レベル(UCL)、快適レベル(MCL)を検査し、いま言葉がどのように聞き取れているか、補聴器を使った場合にどこまで聞こえるかを調べます。それらをもとに補聴器相談医による補聴器のフィッティング後、2~3カ月程度の貸し出しをおこなう病院もあります。貸し出し期間中は補聴器から入る音に脳を慣らしながら、「音が響く」「聞き取りにくい」などがあれば微調整をして、最適な補聴器を選ぶことができます。

 補聴器を購入後も、すぐに聞こえがよくならないからとあきらめず、医師に相談しながら少しずつ補聴器に慣れていきましょう。

【監修】
岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授
佐藤宏昭医師

(文/石川美香子)

※週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本』から抜粋